2006年11月17日

107. 抗がん剤 投与ということ

抗がん剤 は、がん細胞 だけでなく、正常な細胞や、腎臓にもダメージを与えるといわれています。
 
 父は、亡くなる頃まで大量の抗がん剤 を投与され続けていました。
 
 そして、亡くなる頃には、痛みの緩和のために「モルヒネ 」をも投与され、そのために眠ることが多く,起きては「わけのわからない言葉」を話すことが多くなりました。
 
 三途の川の話や、旅立つ時のお金の話や、装束のこと.
 
川原で石を積んでいる子どもたちの様子などを、目覚めた時に詳しく話し始めるのです。
 
母は必死になって
「絶対にそっちにいっちゃダメだよ」
と、言い聞かせるように言葉をかけていました。
 
 私はかたわらでそれを聞いていて、あまりにも生々しいので、本当に父は「あっちの世界」と「こっちの世界」を行き来しているのだと思いました。
 
父の目は白目まで黄色になり、腎臓の機能が低下していておなかも腹水で膨れ、まるで「黄色いカエル」のようでした。
 
 私は父に会えるなら、どんな姿になってもいいから、生きていて欲しいと思いましたが、実際に苦しんでいる父のことを思うと、そう思うこと自体が「身勝手」のような気もしていました。
 
 元気になって欲しいと思う気持ちと、日々衰えていく父の姿を見ていると、
(もう無理なんだな)
という諦めとが入り混じり、個室にはどんよりとした重たい空気がずっといつも広がっていました。

 
 父のなくなった季節は夏で、流星が多いときでした。
 
 今では目が悪くなってしまって見えませんが、あの頃は数え切れぬほどの星が見えて、夜の間中姉と一緒に流れ星に向かって何日も父の奇跡を願っていました。


 そんなことぐらいしか、あの時の私たちにはできなかったのです。


  しかし、奇跡は起こりませんでした。

 


 人間が自分に不必要なものを体外に出すには、手術以外には「尿」「汗」「便」「呼気」によるしかありません。
 
それらを排泄する主要な臓器が、腎臓です。
 
 しかし、体がガン に侵され、抗がん剤 の投与によってそれらを排泄する「腎臓」が弱ってしまうと、でるべきものが出る道をふさがれてしまうことになります。
 
 ガン細胞 を 死滅させることができても、肝心の腎臓を痛めてしまっては何にもならない、と子どもながらに感じました。

 
きょうのひとこと
 
 クスリでガン をたたけば、腎臓が弱ります。
 薬が効いてがん が小さくなったとしても、人間も死んでしまいます。
 
 母には、「生きようとする治療」をさせたかったのです。
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